グロテスクなミラノ郷土料理

私が初めてイタリアにやってきたとき、

親切なイタリア人たちが友人と集まって毎年、

年に2度やっているという

食事会に誘ってくれた。

 

そして、その年の1回目の食事会は6月に行われ、

私のためにミラノの郷土料理が食べられるというレストランを選んでくれていた。

といっても、普通のイタリア料理もあるとのことだ。

 

食事会をすることになったのは、

ミラノ市内といいながらも、

目の前の道路を渡れば、もう郊外という場所で、

そして目の前には大きな墓地があった。

その名も「Casa Mia(カーザ・ミーア)」

といい、

日本語でいうと「私の家」とか「我が家」といった意味である。

 

店のなかに入ると、我が家というよりもパブといったような感じだった。

ミラノは蚊が多いのだが、蚊もヨーロッパ調で、日本のものよりも大きく、

少し色が薄く、全体的に薄茶色をしている。

初めて見ると、それが蚊とは気づかないかもしれない。

その蚊が私の足にまとわりつき、

それを手ではらいながら、

私はメニューに目を落とした。

 

当時、イタリア語も勉強しないままにイタリアへ飛び込んだ私には、ちんぷんかんぷんだ。

とりあえず、「私の好きそうなものを適当に注文してくれる?」

と私は、親切なイタリア人に自分の注文する料理を丸投げしてしまった。

 

全員それぞれが注文した料理がどんどん運ばれてきて、

私にはとうもろこしの粉で作られたポレンタがきた。

初めて食べたが美味しかった。

ほのかに、とうもろこしの味がする塩味の羊羹といった感じだろうか。

それから彼らはどんどん酒がすすみ、

何度も「カンパーイ!」といってグラスを持ち上げるイタリア人もピークにいるといった感じだった。

 

次々にビールのおかわりをして、料理も追加注文をしはじめた。

だけど、当時はまだ彼らが何をいるのか分からないので、

とりあえず調子を合わせて、笑っておくことしかできない。

 

ここで、妙な一品が運ばれてきた。

初めて見る料理だったのだが、それが何か想像などする必要はなかった。

見るからにすぐわかるからだ。

なんと白い大きな皿の上に「卍」の形をしたカエルのフリットが山盛りに積まれているではないか!!

「食べて!さあ、さあ早く!」と言われても、中々フォークが進まない。

「早く、味見してみなさい!」と、やや怒り気味に言ってくる。

彼らはよく、これらの言葉を発するので、食事中でのイタリア人の口癖かもしれない。

親切にすすめてくれても、そこで「はいはい。ありがとう。じゃ、ひとつ…」と、

すぐに返事はできなかった。

それほど、見た目が十分“カエル”だったのだ。

とはいえ、カエルを食べる機会などあるのか?

ここは一つ、腹を決めて食べるしかない。

「気持ちわる~い!」など言っている場合ではないのだ。

勢いだって、数ある中の「出」のような形をしたカエルに手を出した。

ところが、どこを食べればいいのかわからない。

どうやって食べればいいのだろう?

とりあえず、もっとも身がついている太ももあたりをかじってみた。

味わうほどもない少しの肉だったが、特に癖もなく鶏肉のように食べやすかったのを覚えている。

中に細い骨が入っていて、小さくて、あまり身のないフライドチキンのような感じだった。

 

こんな日もあったなと思い出しながら、

初めてカエル料理を食べた日のことを思い出しながら書いていると、

先日、夫が冷凍されたカエルを買ってきた。

スーパーの冷凍食品売り場にあったのだという。

パッケージを見ると、「皮、剥ぎ済み」とあるではないか!

皮を剥いでおいてくれてありがとう、と言いたいところだが、

問題はそういうことではない。

形はやはりカエルなのだ。

一様にカチカチに凍らされたカエルを前に、立ちすくんでしまった。

 

 とりあえず、フリットにしてみようと決めた。

とにかく気持ちが悪いので、コショーをこれでもかというぐらいかけて、

衣をつけて油の中に入れる。

カエルはみるみるうちに小さくなっていった。

カエルの身は縮みやすく、魚料理のようにあまり火を通しすぎてはいけないのだろうか?

よく分からないけど、小さくなってしまったカエルを取り出して、

これまた不必要なまでにレモン汁をかけて食べた。

ただでさえ食べるところのないカエルなのに、さらに食べるところがない。

 

先日、夫のスーパーへ買い物にいくと、冷凍食品の棚にはカタツムリが置かれていた。

エスカルゴ料理が世界で有名なことぐらい、私でも知っている。

だけど、もう珍食材だけは勘弁だ。調理もしたくない。

そもそも調理の仕方が分からないのだ。

カタツムリを手にとろうとする夫を必死で説得したのは言うまでもない。

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