おばあちゃんの知恵

やはり、イタリアにも“おばあちゃんの知恵”と

いうものが存在する。

私が突然、高熱を出した日のことである。
季節の変わり目だったこと、日ごろの疲れやストレスが
原因だったのかもしれないが、
とにかく39度の熱が出てしまった。

大人になると風邪をひいても熱を出す
ということは少なくなって、
熱で寝込むということ自体が、
実に久しぶりだった。

しかし、年々、微熱であっても私の体には
高熱のように感じられる。
やはり、年を重ねると熱は余計につらい。

そんなある日、ベッドで寝ている私をみた夫は、
ジャガイモを半分に切って、切り口を下にし、
私の額の上においた。そして、テレビが見えるように
私の方向に向けてくれ、
そのまま、「がんばれ」と言って、仕事に行った。
何を頑張ればいいのか、よく分からないが、
とにかく体がだるい。

私は土がついたままのジャガイモを額の上に
のせたまま、うつらうつらとテレビを見ていた。
テレビが面白いのかどうかも分からない状態で、
私はジャガイモの土のにおいを嗅ぎながら、
自分がジャガイモ畑にいるジャガイモに
なったような気分で寝入ってしまった。
翌朝、熱はすっかり引いていた。
薬も飲まずに熱が引いたのだから、驚きだ。

夫が言うにはジャガイモは
熱を取り去ってくれるのだという。

本当かどうか定かではないが、
たまたまなのかもしれないけど、
私の場合には非常によく効いたようだ。

それから、夫はリンゴを短冊きりにして
お鍋に水と少量の砂糖を入れて煮込んでいる。
それを食べると体が温まるのだそうだ。
確かに食べやすい味で、
体も温まったので納得の一品だった。
「ビタミンCもとらないとね!」
といって、すでに風邪を引いている私に
ビタミンCを取らせるべく、
また、冷たいものは飲んではいけないからと言って、
こともあろうか冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、
これを鍋で温めていた。
これは、おそろしいほど、まずかった。
(ちなみにリンゴジュースの温めたものは意外と美味しい。)

丸一日、何も食べていない胃には、
胃にやさしいものを食べるべきだろう。
ここでイタリア版おかゆの出現なのだが、
実はイタリアではコンソメスープに
小さな米粒ほどのパスタを入れて食べるのだ。

これにパルメザンチーズをかけて食べることが
多いのだが、これがまたかなり美味しい。

数日後、まだ風邪の気が抜けきらなかったが、
姑の家に顔を出した。私が熱を出した日のことを、
咳をしながら話していると、

「パスタのゆで汁にワインを入れて、それでうがいをしなさい!」

というではないか。
気は進まないが、
日本でも蕎麦湯を飲むことを考えれば、
なんとなく聞きそうな気がしないでもない。
また、風邪で唇がカサカサになっている私に、

「唇がカサカサじゃない!バターを塗りなさい」

という。これも、悪くなさそうだ。
市販のリップクリームよりも
保湿効果は抜群な気がする。

昨年、膝にかさぶたができた姑は、
それを?がそうと躍起になっていたが、
一生懸命、ワインビネガーとオリーブオイルを
塗りこんでいた。

サラダじゃあるまいし…と私は思ったが、
本人は本気である。

しかし、殺菌作用のある酢と、
かさぶたを取りやすくするために
オリーブオイルというのも悪くなさそうだ。

これぞ、イタリア式おばあちゃんの知恵!
何でも食べ物で解決しようとするところも
実にイタリアらしい。

今度、私は日本版おばあちゃんの知恵を
姑に教えてあげようと思っている。
首にねぎを巻くとか、
しょうが湯を飲むとか言ったら、
彼女はどんな顔をするだろうか?

「あー、気持ち悪い!そんなのダメ、ダメ!!」

と思いっきり、手のひらを左右に振りながら
しかめっ面で反対する姿がすでに想像がつく。
試してみようという頭はイタリア人、
とくにお年寄りにはまったくないのだから。

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