恋愛なくして生きていけないパオロくん

「恋愛なくして生きていけないパオロくん」

私の友人にパオロという何の男の子がいる。

男の子といってもすでに46歳である。

しかし165センチという身長と、

マイケル・J・フォックスに似た可愛らしい童顔は、

どう見ても男の子と表現したほうがぴったりだ。

ちなみに彼は家族で一番背が高いのだから、

オドロキである。

パオロはいつもにこにこしており、

ロレーナというガールフレンドといつも一緒にいた。

12年も付き合っていて、

年齢もそこそこだが、結婚はしていない。

二人が付き合いだして12年たった年、

ようやく二人は同棲することにした。

彼らは私を自宅へと招いてくれたのだが、

二人の家は新婚さんのお家のように甘い匂いがした。

家具も食器もすべてが新品で、

それでいて色合いや雰囲気が甘ったるい。

とにかく2人はいつもラブラブという言葉が

よく似合うほどに、人目も場所もはばからず、

目が合うたびに抱き合ったり、キスしていた。

ある日、パオロが私の家に現れた。

私は引っ越しをする予定だったので、

手伝ってくれるように連絡していたからだ。

現れたパオロはマイケル・J・フォックスとは

程遠い顔になっていて、やせ細っていた。

目がくぼんでいて、顔色も悪く、顔につやもない。

もはや、やつれている。。。

口を開けば、

すぐにでも泣きだしてしまいそうな雰囲気だったので、

私は、

「どうしたの?」

と聞かずにはいられなかった。

ここから話が長いのだ。

実はパオロとロレーナは分かれたのだという。

それも彼女から別れを切り出されたらしい。

パオロはまだ現実が呑み込めていない様子で、

話しながら泣き出した。

私はおろおろしながら、

ただパオロの話を聞くことしかできなかった。

彼は辛すぎて眠れず、食事も喉を通らないのだという。

それは、彼のやつれた顔が物語っていた。

その後も何度かパオロには引っ越しを

手伝ってもらったのだが、

私たちはその都度、コーヒーを飲みに行ったり、

食事をしたりして過ごしていた。

次第にパオロの調子も落ち着いたような気がしたころ、

私の夫がいうには、

「あいつに一番効く薬は女だ」

と言っていた。

私も納得してしまった。

もしかすると、性別が女性であれば、

だれでもいいのかもしれない。

それぐらい、彼は恋愛にも女性に対しても一直線で、

恋愛なくして生きていけない人なのだ。

そして、少しずつ食欲も出てきたパオロの顔は

丸みを取り戻しつつあった。

そのうち、パオロから連絡もなくなり、

どうしているのかと心配して電話をしてみると、

なんと彼は新しい彼女を見つけていた。

まだ付き合い始めたばかりと言っていたが、

あれから、ラテンダンスを習いにいきはじめ、

そこで知り合ったのだという。

彼が少しずつ幸せを掴んでいることは、

私たち夫婦にとっても、

とても喜ばしいことだった。

それから数か月経って、

私は夫とともにパオロの自宅に顔をだした。

車の修理をしてもらうためだ。

幸せ真っ只中にあるはずの彼は、

なぜか、再びやせ細っていて、目が血走っている。

少し口を挟もうものなら、

ナイフで切り付けられそうな雰囲気だった。

再び話を聞くと、

今度はロレーナに対する恨み、憎しみで

やり切れないのだという。

あまりの怒りで食事が喉を通らず、

夜も眠れないらしい。

私は以前と同様、おとなしく話をきくことにした。

すると、

「俺たちが同棲をはじめた家は、

ロレーナの両親の所有物だったんだ。

あの家のリフォームをやったのは全部、俺だ。

あのシャワー室を取り付けたのも俺。

その取り付けたガラスのドアにお金を払ったのも俺だ。

あいつらは俺を利用したに違いない。許せない。

訴えてやる!

とまで言い出した。

横にいた彼のお母さんに意見を求めると、

「結局、お金を出したあなたがバカなんじゃないの?」

と、椅子に座っても床につかない足を

ぷらぷらしながら、彼女はそう言った。

私はパオロの怒りがおさまらないのは

雰囲気から想像するにしても、

訴えてやりたいほどとは思わなかった。

そして、後日、彼は本当に裁判所へと

訴えに行ってしまった。

可愛さあまって、憎さ100倍とは

こういうことなのかと間近にして学んだ事柄だった。

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